【潮流の最前線】クラフトビール業界2024年最新トレンド徹底解剖 – 新規顧客と既存ファンの心を掴む次の一手

著者・編集:ゆいねっと 監修:村山優弥 (CUBE BAR)

はじめに

2025年、クラフトビール業界は、かつてないほどの多様性と変化の波に直面しています。消費者の嗜好は成熟し、新たなビアスタイルが次々と登場。原料、製法、テクノロジーも目覚ましい進化を遂げ、市場競争は激化の一途を辿っています。

本連載「クラフトビール新潮流」では、業界関係者の皆様に向け、2024年までのクラフトビール業界を席巻する最新トレンドを徹底解剖。全5回にわたり、味わい、原料、技術革新、消費スタイル、マーケティング戦略… 多角的な視点からトレンドの最前線を深掘りし、新規顧客開拓と既存ファンとのエンゲージメント強化に繋がる次の一手を探ります。

第1章:味わいの多様化と進化 – 既存概念を覆す新ビアスタイル、香味トレンド

クラフトビールの醍醐味の一つ、それは味わいの多様性です。2024年、この多様性は更なる進化を遂げ、既存のビアスタイルの枠を超えた、革新的な潮流が生まれています。

1-1. ヘイジーIPAの進化形:NEIPA Ver. 2.0

ヘイジーIPAの最新トレンドを象徴するビールの画像
ヘイジーIPAの最新トレンドを象徴するビール
beergirl.net

2010年代後半から一大ブームを巻き起こしたヘイジーIPA。2024年、その人気は衰えることなく、新たなステージへと進化を遂げています。キーワードは**「洗練」**。ジューシーさはそのままに、より複雑で奥深い味わい、完成度の高いバランス、そして斬新なアロマ設計が求められています。

  • よりドライでクリスプなフィニッシュ: 甘さ控えめ、ドリンカビリティを追求したスタイルがトレンド
  • ホップの組み合わせによる複雑なアロマ: 単一ホップではなく、複数ホップを掛け合わせ、奥行きのある香りを演出
  • 酵母の選定によるフレーバーコントロール: クリーンな発酵、エステル香を抑えた酵母を使用し、ホップの個性を最大限に引き出す

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Revision Brewing「Revision IPA」: ネバダ州リノの Revision Brewing が醸造する「Revision IPA」は、 West Coast IPA のようにクリスプでありながら、New England IPA のジューシーさとアロマを兼ね備えた、まさに NEIPA Ver. 2.0 と言える IPA です。 Mosaic、Citra、Simcoe ホップの組み合わせにより、トロピカルフルーツ、柑橘、そしてほのかな松ヤニ香が複雑に絡み合います。
  • Brouwerij West「Popfuji」: カリフォルニア州サンペドロの Brouwerij West の「Popfuji」は、ヘイジーながらもクリアな外観を持ち、パイナップル、マンゴー、ネクタリンのようなトロピカルフルーツのアロマが特徴です。 Nelson Sauvin、Citra、Mosaic ホップを使用し、フルーティーでいて、わずかにスパイシーな、複雑な香味を実現しています。

1-2. サワービールのネクストステージ:奥深き酸味の世界

多種多様なサワービール
https://cellarmakerbrewing.com/beer/map-of-the-sun-the-rare-barrel/

近年、多様化が著しいサワービール。2024年は、その奥深さが再評価され、新たなトレンドが生まれています。単なる酸っぱいビールではなく、複雑味、奥行き、テロワールが重視される傾向にあります。

  • フルーツサワーの進化: 単一フルーツだけでなく、複数フルーツを組み合わせ、複雑なフレーバーを構築。地域産フルーツ、希少品種の活用も
  • ランビック、グーズ、ベルギー産サワーエールの再評価: 伝統的な製法、長期熟成による複雑な酸味、テロワールへの注目度が高まる
  • ボタニカルサワー、スパイスサワー: ハーブ、スパイス、フローラルな要素を加え、複雑な香りと味わいを演出。ペアリングの可能性を広げる

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Brouwerij Cantillon「Cantillon Gueuze」: ベルギー、カンティヨン醸造所の「Cantillon Gueuze」は、ランビックの代表格。自然酵母のみで発酵させ、オーク樽で3年間熟成。複雑な酸味、野生酵母由来の独特な風味、長い余韻が特徴です。まさにテロワールを体現するビールと言えるでしょう。
  • The Rare Barrel「Map of the Sun」: カリフォルニア州バークレーの The Rare Barrel の「Map of the Sun」は、アプリコットとネクタリンを使ったフルーツサワーエール。フルーツの甘みと酸味、イースト由来の複雑な風味が絶妙なバランスを生み出しています。

1-3. 低アル・ノンアルコールビール市場の拡大:新たな顧客層の開拓

進化を遂げた低アル・ノンアルコールビールの画像

進化を遂げた低アル・ノンアルコールビール
beoji.jp

健康志向の高まり、ライフスタイルの多様化を背景に、低アルコール・ノンアルコールビール市場が急速に拡大しています。2025年は、味わいの向上ビアスタイルの多様化がさらに進み、ビールファンのみならず、これまでビールに馴染みの薄かった層にもリーチを広げています。

  • ビアスタイルの多様化: IPA、スタウト、ヴァイツェン… 様々なビアスタイルの低アル・ノンアルコールビールが登場
  • 製法技術の進化: 発酵度コントロール、脱アルコール技術… よりビールらしい風味、複雑な味わいを実現
  • ノンアルコールカクテル、モクテルとの融合: ビールテイスト飲料をベースに、ノンアルコールカクテル、モクテルのような楽しみ方を提案

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Athletic Brewing Company「Run Wild IPA」: コネチカット州ストラットフォードの Athletic Brewing Company は、ノンアルコールビール専門ブルワリー。「Run Wild IPA」は、ホップの香りと苦味、IPAらしい飲みごたえをノンアルコールで実現。アクティブなライフスタイルを送る層に支持されています。
  • Kagua「Blanc Non-Alcoholic」: 日本の Far Yeast Brewing が手掛ける「Kagua Blanc Non-Alcoholic」は、ベルジャンホワイトエールのノンアルコールビール。オレンジピール、コリアンダーシードの爽やかな香りはそのままに、アルコール0.0%。食事とのペアリングにも最適です。

1-4. 伝統ビアスタイルの再評価:原点回帰と新たな解釈

最新トレンドが目まぐるしく移り変わる一方で、伝統的なビアスタイルへの回帰、再評価の動きも活発化しています。ピルスナー、ラガー、ヴァイツェン… 基本に立ち返り、素材、製法にこだわり、本質的なビールのおいしさを追求する動きが、業界内で高まっています。

  • 高品質な原料へのこだわり: 麦芽、ホップ、酵母、水… 厳選された素材を使用し、素材本来の味を最大限に引き出す
  • 丁寧な製法、職人技の重視: 伝統的な製法を守りつつ、最新技術も導入。職人の経験、技術を活かし、丁寧にビールを仕込む
  • ペアリング提案、フードとの相乗効果: シンプルなビアスタイルだからこそ、フードペアリングの可能性が広がる。和食、洋食、エスニック… 様々な料理との組み合わせを提案

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Firestone Walker Brewing Company「Pivo」: カリフォルニア州パソロブレスの Firestone Walker Brewing Company の「Pivo」は、チェコスタイルのピルスナー。チェコ産ザーツホップをふんだんに使用し、伝統的なデコクションマッシング製法で醸造。麦芽の 豊富な風味、ホップの 高貴な香り、すっきりとした苦味の完璧なバランスを誇ります.
  • Augustiner-Bräu München「Augustiner Lagerbier Hell」: ドイツ・ミュンヘンの Augustiner-Bräu München の「Augustiner Lagerbier Hell」は、バイエルンスタイルのラガービール。 軽い麦芽の風味、軽いホップの苦味、そして爽やかな後味で、何世紀にもわたり愛されてきた クラシックラガーです。

第2章:原料革命 – 地域産、希少、代替… 素材の力でビールに新たな価値を

ビールの味わいを決定づける重要な要素、原料。2024年、クラフトビール業界では、原料調達においても革新的な動きが加速しています。地域性希少性サステナビリティ… 新たな価値を創出する原料トレンドに注目します。

2-1. 地域産原料の活用:テロワールを表現する

地域産原料:例:地元産ホップ畑の画像

地域産原料:例:地元産ホップ畑
japanhop.jp

地域産原料の使用は、クラフトビールの地域性独自性を表現する上で、欠かせない要素となっています。2024年は、テロワール(土地の個性)をより深く追求する動きが活発化。地域産ホップ、麦芽、水に加え、地域特有の農産物を副原料として活用する事例も増加しています。

  • 地域産ホップの栽培、品種開発: 気候変動に対応した新品種開発、地域在来品種の復活、有機栽培への取り組み
  • 地域産麦芽の利用拡大: 二条大麦に加え、六条大麦、古代麦など、多様な麦品種の活用。麦芽製造工程にもこだわり、テロワールを表現
  • 地域特有の副原料: フルーツ、ハーブ、スパイス、野菜… 地域の食文化、風土を反映したビール造り

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Rogue Ales & Spirits「7 Hop IPA」: オレゴン州ニューポートの Rogue Ales & Spirits の「7 Hop IPA」は、自社農場で栽培された7種類のホップを使用。 Cascade、Centennial、Crystal など、オレゴン州のテロワールを反映したホップの 豊富なアロマ、バランスの取れた苦味が特徴です。まさに地域産原料の魅力を最大限に引き出した IPA と言えるでしょう。
  • Sierra Nevada Brewing Company「Estate Homegrown Ale」: カリフォルニア州チコの Sierra Nevada Brewing Company の「Estate Homegrown Ale」は、自社農園で栽培されたホップ、大麦、蜂蜜を使用。 土っぽく、草っぽく、蜂蜜のような微妙なニュアンスが特徴で、まさに農園のテロワールをボトルに詰め込んだようなビールです。

* テロワールとは
元々ワイン業界で、ブドウの生育環境(土壌、気候、地形など)がワインの風味に与える影響を指す言葉として使われています。
風土(その土地の気候や地形、文化などが生み出す独特の性質)
産地の個性(原料の産地が持つ独特の特徴)
土地の味わい(その土地ならではの風味)
地域の特性(地域ごとの特徴)

2-2. 希少ホップ、古代麦の可能性:物語を語る素材

希少ホップ、古代麦の画像
希少ホップ、古代麦
www.springvalleybrewery.jp

希少ホップ、古代麦など、希少価値の高い原料は、クラフトビールに物語性プレミアム感 を付与します。2024年は、これらの希少原料の持続可能な調達安定供給 にも注目が集まっています。

  • 希少ホップの探索、契約栽培: ワイルドホップ、海外の希少品種… 新たな香味特性を持つホップを探求し、契約栽培を推進
  • 古代麦の復活、品種改良: スペルト麦、ライ麦、キヌア… 古代麦の栽培技術を確立し、ビール醸造への応用を研究
  • 限定醸造、プレミアムビール: 希少原料を使用した限定ビールを開発。高価格帯でも差別化、ブランド価値向上

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Yakima Chief Hops「Cryo Hops®」: ワシントン州ヤキマバレーの Yakima Chief Hops が開発した「Cryo Hops®」は、希少ホップを濃縮した革新的な製品です。 収穫後すぐに冷凍したホップを液体窒素で冷却し、低温でホップのルプリン腺のみを抽出する テクノロジー を使用することで、 強い香り、最小限のハーブ風味を実現しました。 Cryo Hops® を使用することで、 少量でも香りを増強でき、 希少ホップの効果的活用に貢献します。
  • Briess Malt & Ingredients Company「White Wheat Malt」: ウィスコンシン州チルトンの Briess Malt & Ingredients Company の「White Wheat Malt」は、古代麦 white wheat を使用した麦芽大麦です。通常の小麦麦芽よりもタンパク質が少なく、 hazy IPA に使用することで、 haze を抑えつつ、 なめらかな口当たり、繊細な小麦の風味を付与できます。古代麦ならではのユニークさをビールに追加します。

2-3. 代替原料の挑戦:ビール表現の自由度を拡大

多様な代替原料:フルーツ、スパイスなどの画像

多様な代替原料:フルーツ、スパイスなど
chibanian.info

従来のビール原料にとらわれず、代替原料を活用する動きも加速しています。フルーツ、スパイス、ハーブ、野菜、木材… 斬新な素材の組み合わせは、新たなビアスタイルユニークな香味多様なニーズへの対応を可能にします。

  • フルーツ、スパイス、ハーブ: 定番のフルーツに加え、トロピカルフルーツ、ベリー類、和柑橘など、多様な素材を使用。スパイス、ハーブとの組み合わせで複雑な香りを演出
  • 野菜、穀物、豆類: 野菜(カボチャ、サツマイモ)、穀物(米、トウモロコシ)、豆類(大豆、レンズ豆)… 新たな食感、風味、栄養価を付与。グルテンフリービール、ヴィーガンビールへの応用も
  • 木材、樹脂: 樽材に加え、杉、檜、桜チップなど、多様な木材、樹脂を使用。熟成香に加え、木材由来の香り、風味、タンニンを付与

注目ブルワリー / 銘柄事例:

  • Mikkeller「Spontancoffee」: デンマークの Mikkeller の「Spontancoffee」は、コーヒー豆を使用したフルーツランビック。コーヒーのロースト香、酸味、フルーツランビックの複雑な酸味と野生酵母の風味が絶妙に調和。斬新な組み合わせで、新たなビール体験を提供します。
  • Against the Grain Brewery「Pile of Face」: ケンタッキー州ルイビルの Against the Grain Brewery の「Pile of Face」は、ピーナッツバターミルクスタウト。ピーナッツバターの香ばしさ、甘み、スタウトのロースト感、クリーミーな口当たりが 普通でないおいしい組み合わせを生み出します. デザートビールとしても 最適です。

第3章:醸造技術の革新 – AI、IoT、サステナブル… テクノロジーが変革するビール造りの未来

テクノロジーの進化は、クラフトビール業界にも大きな変革をもたらしています。AIIoTサステナブル醸造… 最新技術を積極的に導入し、品質向上効率化環境負荷低減 を実現する動きが加速しています。

3-1. AIを活用した品質管理、レシピ開発:データドリブン醸造

AIを活用した醸造管理システムの画像

AIを活用した醸造管理システム
dcross.impress.co.jp

AI(人工知能)は、これまで職人の経験と勘に頼っていたビール造りの品質管理レシピ開発 を大きく変革する可能性を秘めています。データドリブンなアプローチにより、品質安定効率化再現性 向上に貢献します。

  • AIによる官能評価、フレーバープロファイル分析: AIがビールの香味を分析、数値化。客観的なデータに基づき、品質管理、レシピ改善
  • レシピ最適化、異常検知: 過去のデータ、AI分析に基づき、最適なレシピを自動生成。製造工程の異常を早期検知、品質劣化を抑制
  • AIを活用した需要予測、生産計画: 過去の販売データ、気象データ、イベント情報などをAIが分析。需要を予測し、最適な生産計画を立案、在庫管理を効率化

注目ブルワリー / 導入事例:

  • Brooklyn Brewery「AIを活用した品質管理システム」: ニューヨーク州ブルックリンの Brooklyn Brewery は、 AI 品質管理システムを導入し、 発酵プロセスを最適化。AI が発酵中のビールダタを解析し、 温度・時間・酵母の活動を自動調整することで、品質の安定化、生産効率の向上、コスト削減を実現しました。
  • Sierra Nevada Brewing Company「AIレシピ開発支援ツール」: カリフォルニア州チコの Sierra Nevada Brewing Company は、AI レシピ開発支援ツールを導入して、過去のレシピ データ、消費者嗜好データ、市場トレンドを AI が分析することで、革新的な新しいビール レシピを開発しています。開発期間の短縮、新製品開発の成功率向上に貢献します。

3-2. IoTによる生産性向上、トレーサビリティ確保:スマートブルワリー

IoTを活用した醸造設備の画像

IoTを活用した醸造設備
www.shonan-it.ac.jp

IoT(モノのインターネット)技術は、醸造設備の遠隔監視データ収集自動制御 を可能にし、生産性向上品質管理トレーサビリティ確保 に貢献します。スマートブルワリー化は、中小規模ブルワリーにとっても、競争力強化の鍵となります。

  • センサーによるリアルタイム監視: 温度、湿度、流量、圧力… 各種センサーでデータを収集。醸造設備の稼働状況、ビールの状態をリアルタイムで監視
  • データ分析、自動制御: 収集したデータを分析。異常を検知、自動で設備を制御。品質安定、省エネ、人件費削減
  • トレーサビリティシステム構築: 原料、製造工程、品質データ… 一元管理し、トレーサビリティを確保。消費者への情報公開、信頼性向上

注目ブルワリー / 導入事例:

  • Paulaner Brauerei「IoTを活用した生産管理システム」: ドイツ・ミュンヘンの Paulaner Brauerei は、IoT を 導入した生産管理システムを構築し、醸造プロセス 全体をデジタル化、センサーから収集したデータを分析することで生産効率の向上、エネルギー消費量の 削減、品質管理の徹底化を実現する伝統的なビール生産と最新テクノロジーの融合例と言えるでしょう。
  • Stone Brewing「ブロックチェーン ベース トレーサビリティシステム」: カリフォルニア州サンディエゴの Stone Brewing は、ブロックチェーンテクノロジーを使用したトレーサビリティシステムを導入して原料の 調達から消費者に届くまで、ビール生産の全プロセスを透明化、アプリを通して消費者がビールの原材料、生産プロセス、品質情報を確認できるように することで透明性をアピールし消費者信頼感を獲得します。

3-3. サステナブル醸造:地球環境と共存する

サステナブルな醸造所の画像

サステナブルな醸造所
www.c-value.jp

地球温暖化、資源枯渇… 環境問題への意識が高まる中、クラフトビール業界でもサステナブル醸造への取り組みが不可欠となっています。環境負荷低減資源循環地域社会への貢献… 持続可能なビール造りを目指す動きが加速しています。

  • 再生可能エネルギー導入: 太陽光発電、風力発電… 再生可能エネルギーを導入し、CO2排出量を削減。環境負荷低減、電気代削減
  • 節水技術、排水処理: 節水型設備導入、醸造工程の見直し、排水リサイクルシステム構築。水資源を有効活用、環境負荷を低減
  • 廃棄物削減、リサイクル: 麦芽粕、ホップ粕… 廃棄物を堆肥化、飼料化、バイオマスエネルギー化。資源循環型経済を構築
  • 環境に配慮した容器、包装: リサイクル可能な素材、軽量化容器、包装材の削減。環境負荷低減、コスト削減

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • New Belgium Brewing Company「100% Renewable Energy Brewery」: コロラド州フォートコリンズの New Belgium Brewing Company は、100% 再生可能エネルギーで醸造所を運営するパイオニアです。太陽光発電、風力発電、バイオマス発電 を組み合わせ使用電力の 全てを再生可能エネルギーで賄っています。環境責任を優先するモダンなブルワリーのモデルケースと言えるでしょう.
  • Stone Brewing「麦芽粕リサイクルプログラム」: カリフォルニア州サンディエゴの Stone Brewing は、麦芽粕リサイクルプログラムを実施し、生産工程で発生する麦芽粕を地元農家に提供、動物の栄養や土壌改良材として効果的活用を支援しています。廃棄物削減、地域農家支援、資源循環型経済構築に貢献する取り組みです。

第4章:消費スタイルの変化 – 家飲み、オンライン、体験型… 多様化する顧客接点とエンゲージメント戦略

消費者のライフスタイル、価値観の変化に伴い、ビールの消費スタイルも多様化しています。家飲み需要の進化、オンライン販売の拡大、体験型消費への期待… 変化を捉え、新たな顧客接点、エンゲージメント戦略を構築する必要があります。

4-1. 家飲み需要の進化:自宅でのビール体験価値向上

家飲み需要:多様なクラフトビールとフードペアリングの画像
家飲み需要:多様なクラフトビールとフードペアリング
www.hoppin-garage.com

コロナ禍を経て、家飲みは単なる代替消費ではなく、新たなビール消費のスタイルとして定着しました。2025年は、家飲み需要はさらに進化し、多様化高級化パーソナライズの傾向が強まっています。

  • 多様なニーズへの対応: 少量飲み、飲み比べ、ペアリング、ギフト… 多様なニーズに対応した商品企画、提案
  • 高級化、プレミアム化: 高品質なクラフトビール、限定ビール、高級グラス、ギフトセット… 自宅での贅沢なビール体験を演出
  • パーソナライズされた提案: ECサイト、アプリ、SNS… 顧客データに基づき、個人の嗜好に合わせたビール、ペアリング、楽しみ方を提案

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • BrewDog「Online Beer School」: スコットランドの BrewDog は、オンラインビアスクールを開講し、ビールテイスティング、ビール生産、フードペアリング など、多彩なコンテンツを提供しています。自宅にいながらビールの知識、楽しみ方を深められるオンライン体験は、家飲み需要の高まりと消費者教育の両方を満たすモダンな取り組みです。
  • 箕面ビール「お家で tap experience セット」: 日本の 箕面ビール は、自宅でドラフトビールの味を楽しめる「お家で tap experience セット」を開発、販売しています。家庭用ビールサーバー、ミニ樽ビール、オリジナルグラスをセットにすることで、レストランレベルの ビール体験を自宅で実現できます。家飲み需要の高度化、体験価値 向上ニーズに応える提案です。

4-2. オンライン販売、サブスクリプションサービス拡大:新たな顧客接点

オンライン販売、サブスクリプションサービスの例の画像
オンライン販売、サブスクリプションサービスの例
shop-pro.jp

ECサイト、オンラインストアは、クラフトビール販売の重要チャネルとして確立されました。2025年は、オンライン販売はさらに進化し、サブスクリプションサービスD2Cモデルと融合することで、新たな顧客接点を拡大しています。

  • ECサイト強化、顧客体験向上: サイトデザイン、UI/UX改善、商品情報充実、レビュー機能強化… オンラインでの購買体験を向上
  • サブスクリプションサービス導入: 定期的にビールを届けるサブスクリプションサービスを導入。顧客ロイヤルティ向上、安定的な収益確保
  • D2Cモデル、オンラインコミュニティ: 自社ECサイトを強化し、中間流通を介さず、顧客と直接取引。オンラインコミュニティを運営し、ファンとのエンゲージメントを強化

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • BrewDog「Online Beer Shop」: スコットランドの BrewDog は、 充実した品揃えのオンラインビールショップを展開、限定ビール、海外ビール、自社グッズなど多彩な商品ラインナップで消費者満足度を追求。購入履歴、嗜好データに基づくパーソナライズおすすめ機能も搭載し、オンラインでの購買体験価値を大幅に向上させています。
  • Beer Cartel「Beer Subscription Box」: オーストラリアの Beer Cartel は、多彩なビール定期便サービスを提供、毎月テーマに合わせたクラフトビールをセレクトし消費者に驚きと発見を提供しています。ビールアマチュアの好奇心、探求心を満たすサブスクリプションモデルの先進事例です。

4-3. 体験型消費への期待:リアルとバーチャルの融合

ブルワリーツアー、テイスティングイベントの様子の画像
ブルワリーツアー、テイスティングイベントの様子
yonasato.com

感染症の影響が落ち着き、体験型消費への期待が再び高まっています。ブルワリーツアー、テイスティングイベント、ワークショップ… リアルな体験は、ブランドロイヤルティ顧客エンゲージメント 向上に不可欠です。2025年は、リアルバーチャルを融合した、新たな体験価値提供が求められます。

  • リアルイベント再開、感染症対策: 感染症対策を徹底し、ブルワリーツアー、テイスティングイベントを再開。安心安全な環境を提供
  • オンライン体験、バーチャルツアー進化: オンラインテイスティング、バーチャルブルワリーツアー、オンラインワークショップ… 場所、時間にとらわれない体験を提供
  • リアルとバーチャルの融合: リアルイベントとオンラインイベントを組み合わせ、ハイブリッドイベントを開催。顧客体験価値を最大化

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • Stone Brewing「バーチャル ブルワリーツアー」: カリフォルニア州サンディエゴの Stone Brewing は自宅にいながらブルワリーツアーを体験できるバーチャルツアーを開発。360度 カメラ映像、VR テクノロジーを使用することで臨場感あふれるブルワリー見学体験を提供し、物理的な距離の壁を取り払い、幅広い視聴者にブランド体験を提供します。
  • Y Market Brewing「オンライン ビール テイスティング イベント」: 日本の Y Market Brewing は、定期的にオンラインビールテイスティングイベントを開催。ブルワーがビール の特徴、こだわりを解説、消費者は自宅で落ち着いてテイスティングを楽しめます。リアルイベントに参加できない消費者にもブルワリーとの接点というブランド体験機会を提供する有効な手段です。

第5章:マーケティング新潮流 – D2C、パーソナライズ、コミュニティ… 顧客体験価値を最大化する戦略

市場競争が激化する中、従来のマーケティング手法では、新規顧客獲得、ブランドロイヤルティ向上は困難になっています。2025年は、顧客体験価値を最大化するマーケティング戦略が、成功の鍵を握ります。D2C (Direct to Consumer) モデル、パーソナライズされた顧客体験、コミュニティマーケティング… 最新トレンドを解説します。

5-1. D2C (Direct to Consumer) モデルの浸透:顧客との直接的な関係構築

D2Cモデル:ブルワリーから顧客へ直接ビールが届くイメージの画像
D2Cモデル:ブルワリーから顧客へ直接ビールが届くイメージ
www.senshukai.co.jp

D2C (Direct to Consumer) モデルは、ブルワリーが自社ECサイト直営店オンラインコミュニティなどを活用し、顧客と直接的な関係を構築する販売戦略です。中間流通を省くことで、収益性向上顧客データ活用、ブランドロイヤルティ強化に繋がります。

  • 自社ECサイト構築、強化: ECプラットフォーム活用、UI/UX改善、商品ラインナップ拡充、コンテンツマーケティング
  • 直営店、ビアパブ展開: ブランド体験拠点として、直営店、ビアパブを戦略的に展開。顧客とのリアルな接点を創出
  • オンラインコミュニティ運営: SNS、会員制サイト、フォーラム… オンラインコミュニティを運営し、ファン同士の交流、ブランドへの愛着を育む

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • Modern Times Beer「D2C ECサイト戦略」: カリフォルニア州サンディエゴの Modern Times Beer は、 D2C ECサイトを積極的に活用し広い品揃えの自社ビール、限定グッズ、 コーヒー豆などを消費者に直接販売しています。ECサイト限定ビール、定期購入サービス、オンラインイベントなど様々なコンテンツ を提供することでファン エンゲージメント を深めています。
  • Garage Project「フラッグシップストア戦略」: ニュージーランド、ウェリントンの Garage Project は、オークランド、ウェリントン、ロンドンにフラッグシップストアを展開、ブランド世界観を体現する空間で消費者は新鮮なビールを楽しむだけでなく、醸造所の哲学、文化に触れることができます。リアルな ブランド体験を通してファン層を拡大しています。

5-2. パーソナライズされた顧客体験:One to One マーケティング

パーソナライズされた顧客体験:顧客データに基づいたレコメンドの画像
パーソナライズされた顧客体験:顧客データに基づいたレコメンド
www.mico-cloud.jp

顧客の嗜好が多様化する現代において、パーソナライズされた顧客体験は、競争上の優位性を確立する上で不可欠です。顧客データを分析し、個々の顧客に最適化されたビール提案、情報提供、サービス提供を行う One to One マーケティング が注目されています。

  • 顧客データ収集、分析基盤構築: POSデータ、ECサイト購買履歴、会員情報、SNSデータ… 顧客データを統合的に収集、分析できる基盤を構築
  • パーソナライズ レコメンドエンジン導入: 顧客の嗜好データに基づき、最適なビール、ペアリング、イベント情報などをレコメンド
  • One to One コミュニケーション: メールマガジン、アプリプッシュ通知、チャットボット… パーソナライズされた情報、メッセージを顧客個人に 届ける

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • Stone Brewing「パーソナライズおすすめアプリ」: カリフォルニア州サンディエゴの Stone Brewing は、公式アプリにパーソナライズおすすめ機能を搭載、顧客の過去の購入履歴、評価データ、嗜好アンケートに基づき、その消費者に最適なビール、フードペアリング、 イベント情報をおすすめします。アプリを通して、 One to One マーケティングを実現し、消費者満足度、顧客ロイヤルティ向上に貢献します。
  • Ballast Point Brewing Company「オンライン パーソナライズ ビール診断」: カリフォルニア州サンディエゴの Ballast Point Brewing Company は、公式 サイトでオンラインパーソナルサービス診断ツールを提供。消費者はいくつかの質問に答えるだけで、自身の嗜好に 合ったビールを見つけることができます。ビール初心者、新しいビールにチャレンジしたい 消費者にとって役立つツールとなっています。

5-3. コミュニティマーケティング:ファンとの共創、熱狂的なファン育成

コミュニティマーケティング:ファンイベントの様子の画像
コミュニティマーケティング:ファンイベントの様子
insights.amana.jp

ブランドと顧客、そして顧客同士のコミュニティを育成するコミュニティマーケティングは、長期的なブランドロイヤルティを構築し、熱狂的なファンを育成する上で、非常に有効な戦略です。共創エンゲージメントUGC (ユーザー生成コンテンツ) がキーワードとなります。

  • オンラインコミュニティ、ファンクラブ運営: SNSグループ、会員制フォーラム、Discordサーバー… オンラインコミュニティ、ファンクラブを運営し、双方向コミュニケーション、情報交換、ファン同士の交流を促進
  • ファンイベント、交流会開催: ブルワリーツアー、テイスティングイベント、BBQ、ビール ビール交流会… オフラインでのファンイベント、交流会を開催し、リアルなコミュニティ を醸成。 ブランド、ファン 同士のエンゲージメントを深めます。
  • UGC (ユーザー生成コンテンツ) 活用: SNS、口コミ サイト、ブログなどで消費者が生成したコンテンツを積極的に活用。ブランド 公式 アカウントでリポスト、コンテスト開催、ランキング 形式で公開 … UGCを活用することで、コミュニティの活性化、ブランドイメージ 向上、口コミ効果拡大、新規顧客獲得に繋げます.

注目ブルワリー / 取り組み事例:

  • BrewDog「Equity for Punks Tomorrow」: スコットランドの BrewDog は、 株式投資型 クラウドファンディング 「Equity for Punks Tomorrow」 を実施し、ファンがブルワリーのオーナーになれる機会を提供。投資家限定イベント、限定ビール規定、株主コミュニティ 運営など、ファンをブランド大使、長期サポーターとして積極的に巻き込む戦略を展開しています。 ファンとの共創関係を構築し、ブランドロイヤルティを飛躍的に向上させる例と言えるでしょう。
  • Y Market Brewing「#YMBビールのある風景 フォトコンテスト」: 日本の Y Market Brewing は、Instagramで 「#YMBビールのある風景 フォトコンテスト」 を開催。消費者にYMBビールとの生活シーンを写真で投稿してもらい、優秀作品を公式アカウントでリポスト、 景品規定することで、UGCを活性化、ファンの自発的な情報発信を促進し、新規顧客層へのブランド認知度 拡大、コミュニティのエンゲージメント向上に貢献しています。

結論:

2025年、クラフトビール業界は、多様化、進化、革新の波がさらに高まります。味わい、原料、技術、消費スタイル、マーケティング… あらゆる領域で新しい トレンドが生まれ、業界競争は激化 します。

この激動の時代を生き残り、更なる成長を実現するためには、最新トレンドを正確に理解し、変化 に柔軟に対応する適応性が不可欠です。

本連載 「クラフトビール新潮流」 で解説した5つのキートレンド。

  1. 味わいの多様化と進化
  2. 原料革命
  3. 醸造技術の革新
  4. 消費スタイルの変化
  5. マーケティング新潮流

これらは、 2025年のクラフトビール業界を理解する上で、羅針盤となるでしょう。

各ブルワリー は、これらのトレンドを参考に、自社の強み、顧客ニーズ、地域の特性などを考慮しながら、独自の戦略を策定、実行する必要があります。

新規顧客開拓既存ファンのエンゲージメント強化 、この二重の課題の達成こそが、 2025年のクラフトビール業界で成功を掴むための、 «次の一手» となるでしょう。

さあ、 変化の波を乗りこなし、 クラフトビール業界の未来を切り拓きましょう!

本連載は全5回を予定しています。次回は「原料革命 – 地域産、希少、代替… 素材の力でビールに新たな価値を」と題し、原料トレンドの最前線を深掘りします。ご期待ください。

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