今日は何の日【6月11日】雑節ー入梅ー

本日、暦は「入梅」へ。恵みの雨と暮らす、日本の豊かな季節

皆さん、こんにちは。窓の外では、しとしとと雨が降り続いているでしょうか。木々の緑は雨に濡れて一層色を深め、道端の紫陽花はまるで宝石のように輝いています。さて、本日6月11日は、日本の季節の移ろいを表す「雑節（ざっせつ）」の一つ、「入梅（にゅうばい）」です。

「入梅」という言葉の通り、暦の上では、まさに今日から本格的な梅雨の季節に入ります。気象庁が発表する「梅雨入り」とはまた別に、私たちの祖先が大切にしてきた暦の上の節目。それは、自然と共に暮らすための知恵と、この時期ならではの風情に満ちています。

そんな「入梅」について、その意味や由来、気象庁の発表との違い、そしてこの雨の季節を心豊かに過ごすためのヒントまで、詳しくご紹介していきます。憂鬱に感じがちな梅雨の季節が、少しだけ愛おしくなるかもしれません。

「入梅」は、二十四節気を補うために日本で生まれた暦「雑節」の一つです。雑節には他にも、節分や彼岸、八十八夜、土用など、私たちの生活に深く根付いたものが多くあります。

「入梅」は、その名の通り「梅雨の季節に入る日」とされ、昔の暦では二十四節気の「芒種（ぼうしゅ）」を過ぎて最初の壬（みずのえ）の日とされていました。しかし、現在では太陽の黄経（太陽が天球上のどの位置にあるかを示す座標）が80度に達する日と定義されており、例年6月11日頃にあたります。

「気象庁の梅雨入り」との違いは？

ここで少し疑問に思うのが、「気象庁が発表する梅雨入りとは違うの？」という点ですよね。この二つには明確な違いがあります。

暦の上の「入梅」: 太陽の動きに基づいて算出されるため、毎年ほぼ同じ日付になります。古くから農作業の目安として使われてきました。
気象庁の「梅雨入り宣言」: 実際の気象状況（曇りや雨の日が続くなど）を観測し、専門家が判断して発表されます。そのため、年や地域によって日付が大きく異なります。

つまり、「入梅」は「暦の上での梅雨の始まりの目安となる日」、「梅雨入り宣言」は「実際の天候としての梅雨の始まり」と考えると分かりやすいでしょう。暦の上の入梅を迎える頃、実際の天気も梅雨らしくなってくることが多い、というわけですね。

入梅の時期は、雨が大地を潤し、生命が生き生きと輝く季節です。

あじさいの季節、最高潮へ: 雨粒をきらきらとまとう紫陽花の花が、最も美しい見頃を迎えます。お寺の境内や公園、庭先など、日本の至る所でその美しい姿を見せてくれます。
梅の実、収穫のピーク: 「梅雨」の語源とも言われる梅の実が、黄色く熟して収穫の最盛期を迎えます。梅の甘酸っぱい香りが漂うのもこの時期ならでは。
緑深まる水田: 田植えを終えた水田では、早苗がしっかりと根付き、風にそよぎながら青々と成長していきます。
苔の美しさ: 雨をたっぷりと含んだ苔は、ビロードのような輝きを放ちます。お寺の庭園などで見られる苔の絨毯は、まさに圧巻の美しさです。

湿度が高く、何かと不快に感じがちなこの季節。ですが、少しの工夫で心地よく、そして楽しく過ごすことができます。

「梅仕事」に勤しむ: この時期の最大の楽しみといえば、やはり「梅仕事」。収穫された梅を使って、梅酒、梅シロップ、梅干し、梅ジャムなどを作る絶好の機会です。手間をかけて作った保存食は、夏の暑い日々の元気を支えてくれるでしょう。
湿気とカビ、食中毒対策を万全に: 暮らしの知恵も大切です。こまめな換気や除湿器の活用で、カビの発生を防ぎましょう。また、気温と湿度が上がるため、食材の管理には十分注意し、食中毒対策を心がけることが重要です。
おうち時間を充実させる: 雨で外出が億劫な日は、絶好の「おうち時間」日和。読みたかった本を読んだり、映画を観たり、普段はなかなかできない手仕事に挑戦したりするのも素敵です。
雨の日の風情を味わう: お気に入りの傘やレインシューズを新調して、あえて雨の中を散策してみるのも一興です。雨に濡れた庭園や神社仏閣は、晴れた日とはまた違う、しっとりとした趣を見せてくれます。

この時期の旬の食材は、体内にこもりがちな熱を冷まし、体の調子を整えてくれるものが豊富です。

野菜: きゅうり、なす、トマト、ピーマンなどの夏野菜が本格的に出回り始めます。また、爽やかな香りのみょうがや、漬物にぴったりのらっきょうも旬です。
果物: 梅はもちろん、甘酸っぱいあんず、終盤を迎えるさくらんぼ、そして贈答用としても人気のメロンなどが美味しくなります。
魚介類: 引き続きあじやいわしが美味しく、天ぷらにすると絶品のキス、塩焼きが美味しいいさきなどが旬を迎えます。