響きあう世界:
Ash が奏でる琵琶の魂、
世界的な舞台から川崎の心へ
序章 夏の夜の魔法への誘い
夏の終わりの黄昏時、川崎の老舗人形工房はやしやに蝉時雨のような琵琶の音が満ちる。
ひと撥(ばち)で空気を震わせるのは、俳優・演出家・MC・そして琵琶奏者――
Ash(雅号:藤江桜輔)。
8月24日開催の演奏会 『蜩(ひぐらし)〜琵琶とお人形とけずり氷の夕べ〜』 を前に、
彼女の“物語を奏でる生き様”を紐解く。
10代で世界ツアーに参加し、演劇と言語の多様性を体得。
俳優・演出家の視点で、琵琶にドラマ性を注入。
教育・地域劇団・ライター活動。街と共振する芸術家。
第1章 世界という舞台:火花の発火点
1.1 高校生が帝劇を動かす——『レ・ミゼラブル』コピー上演
Ash の原点は高校時代の自主ミュージカル。帝国劇場の演出家を驚かせた舞台は、 「演じる」と「創る」を両立させる才能の証明だった。
1.2 世界 80 都市を駆け抜けた“演劇修行”
大学を休学し、ブロードウェイ式ミュージカルを携えて北米・欧州・アジア… 80 都市以上を渡り歩く。ベルリンのキンダーサーカス、パリのサロン演劇―― 多文化の“声”が身体に刻まれていく。
演出家の言葉が転機に。
演劇と福祉を架橋。
第2章 運命の響き:琵琶との邂逅
2.1 涙を呼んだ一曲『時雨曽我』
姉弟子の稽古で偶然耳にした 錦琵琶 の名曲。 剣戟・雨音・恋慕が“映像のように流れ込んだ”瞬間、Ash は悟る。 「私がやるべき音楽がここにある」と。
2.2 剛と柔を宿す“第三の琵琶”
薩摩琵琶の勇壮と筑前琵琶の叙情を併せ持つ 錦琵琶。 五弦五柱の複雑な構造は、〈俳優 × 演出家 × 音楽家〉という Ash 自身のハイブリッドな才能を映し出す。
武士教育から生まれた勇ましい語り。
女性語り部が育んだ繊細な抒情。
剛×柔 を統合し、多彩な物語表現を可能にする。
第3章 川崎に蒔く“芸術の種”
3.1 高校演劇指導から地域劇団へ
2006 年、県立川崎高校の演劇講師に就任。 教え子たちと立ち上げた 「カワサキアリス」 は、心を病む若者も受け入れる 〈演劇×ケア〉の実験場として 10 年間活動した。
3.2 街の“語り部”として
Yahoo!ニュースで文化記事を発信、武蔵小杉を拠点に 地域×アート をつなぐライターとしても活躍。 舞台だけでなく“ペン”でも物語を届ける。
第4章 最新公演『蜩』で味わう五感の物語
4.1 会場が語る——老舗人形工房 × 琵琶
舞台は大正創業の人形店。
静かに佇む雛人形が見守る中、剣豪 曲垣平九郎 の勇壮な物語が奏でられる。
場所そのものが “語り” の装置となるのが Ash 流だ。
受付16:00|開演18:30
川崎区新川通3-10
いちご・抹茶ほか選べる手作り氷
先着20名・小学生以下無料
4.2 “かき氷で涼む”鑑賞スタイル
Ash は芸術を〈日常の喜び〉に接続する達人。
甘い けずり氷 を頬張りながら聴く勇壮な琵琶――
特別と日常が交差する瞬間をデザインする。
結び 時代を超える、物語の力
世界を駆けた演劇人が、日本の古楽器に宿る“声”を見つけ、
川崎というコミュニティで響かせる。
Ash の人生は、多文化の円環 であり、物語の輪廻だ。
8 月 24 日、人形工房の静けさに鳴る琵琶は、
私たちの心に「忘れ得ぬ一撥」を刻むだろう。